季節は9月ー。
夏も終わりに差し掛かるが、残暑のせいであろう
夕方でも外は照りつける太陽でジリジリと暑い。
学校の授業が終わり、小学校から家までの100m程の短い帰り道を私は駆け足で帰る。
赤いランドセルを背負う背中にじっとりと汗をかく。
いつも通り変わらない、家の玄関に続く石畳を駆け抜けてから、少し後ずさった。
家を囲む石垣の下、道路の脇にこげ茶色の何かが見える。
近づいてしゃがみ覗いてみる。1羽のスズメが横たわっていた。
目は閉じており、翼は閉じて動き出す様子も気配もない。
このようなことは始めてで慌てていたが、スズメはそのままに家の中まで走り、
「おばあちゃーーーん!スズメが倒れている!」と大声で叫んだ。
困った時は、いつも頼りになるおばあちゃん。
すぐに小さな紙箱に、キッチンナプキンを引いて持ってきてくれた。
私はティッシュを3枚折り、枕と敷布団、掛布団を紙箱の中に作り、
すずめをティッシュでくるんで優しく持ち上げた。
私の手のひらと丁度同じ大きさくらいのスズメ。両手で丁度すっぽり包むことができた。
ほのかに手に伝わる体温と小さく息をしていることを感じた。
ティッシュで作ったベットに寝かすと、うっすらと目を開けた。
私は「おなかが空いていると思う」と言うと、おばあちゃんは米粒を
5粒ほど柔らかくしたものを持ってきてくれた。
ひとさし指に乗せてスズメの口元に持っていくと、クチバシを小さく開けて米粒を食べた。
1粒しか食べなかった。
元気になるだろうか不安だった。
次の日の朝-
紙箱を除くとスズメは横たわったままだが、方側の翼を弱々しくも何度もはばたかせていた。
まだ起き上がることはできないようだが、目も昨日よりはっきり開いている。
元気になる兆候が見えていると思った。
その日、学校から帰った後も様子は変わらないようだった。
ただ翼を懸命に動かしており「飛びたい」気持ちがひしひしと伝わってきた。
柔らかくした米粒は5粒も食べ、水の容器を近づけるとクチバシを細かく動かした。
おばあちゃんをじっと見上げると眉を下げて優しく笑っていた。
私はおばあちゃんと2人で、家の目の前の林に行き、岩で少し高台になっている草の垣根、
柔らかくひかれた土の上にベットごとスズメを置いた。
「元気に巣に帰るんだよ」と声をかけ、スズメをつんと2度つついて家に帰った。
そして次の日の朝-
スズメを置いた場所に向かうと、もうスズメはおらずティッシュのベットだけ残っていた。
垣根の周りを見まわしてみたが、スズメの姿はなかった。
“少しは力になれたのかな”
心に残る心配な気持ちで、木を扇ぎ見ると優しく風が吹く。
私はゆっくり息を吐いて、今日も変わらない学校への道を歩いていった。
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