「『時間が足りないよ、あと2時間あればいいのに…』とゆうこがつぶやいたんだ。
ゆうこと付き合いだしてから早2ヶ月が経つ。もう2ヶ月だ！俺は今までに3人と付き合ったけど、3週間ともったためしがない。」

図書館の自習室で隣に座った彼女。ガサゴソと筆箱やら鞄やら漁ったと思ったら、ボソッと漏れる声が聞こえた。「あっ消しゴム」
どうやら消しゴムを忘れたらしい。
彼女が見えるところに消しゴムを置くことしかできない僕。
「ちょっと消しゴムを貸してもらえませんか？」その一言が、交わるはずのない彼女と冴えない僕を結びつけた。

「『ねえ、1日が26時間だったらいいのにって思わない？』

普段なら『うん、そうだね』とか『あと3時間は欲しいよ』とか答えるところなのに、
この時はどうしてか、妙なスイッチが入っちゃって、、
『うーん、、そもそも1日の定義は地球の自転が影響してるっていうのはわかるよね？
地球がくるっと一回転したら1日。地球がトリプルアクセルしたら、3日半。
じゃあ地球さん、もうちょいゆっくり回ってくれいという話になるね。
そうすると1日26時間の世界になる。これでハッピー！

なんて行けばいいけど、そうは行かない。
1年間の時間数は変わらないから、1日が26時間になると、1年は28日減る。つまり、1年＝11ヶ月になる。

え、あんま意味ないじゃん。と思うでしょ。1年間の時間数が変わるには公転(地球が太陽の周りを回ること)の速度が遅くなればいいんだ。28日分だけ公転が遅くなれば、1年は365日のままで1日26時間になる。
これでハッピーだ！
って思ったよね。平均寿命が6年くらい減ります。結局なんも変わらないよ？
ということは、人間の生活リズムが6～7時間の睡眠を必要とせず、2～3時間になれ』『もう無理』

その一言を残し、走り去っていくゆうこの背中を俺は茫然と眺めることしかできなかった。
そこからメールも返ってこないし、電話もつながらない

という顛末なんだけど、なんで2ヶ月以上付き合えないんだと思う？」
「お前、正気か(笑)」