あれは中学2年生のころ。
僕には好きな子がいた。名前は井上さん。井上さんはクラスのマドンナだった。いやっ、学校のマドンナといえるほど可愛らしい子だった。清楚で明るくて成績優秀で……。とにかく才色兼備とは井上さんのことをいうんだと思っていた。
そんな井上さんと仲良くなりたかった僕は「相合傘大作戦」というものを考えた。まぁ、作戦といっても大それたものではなく、本当に単純なもの。毎日折りたたみ傘を持っていくってだけ。どんなに晴れてる日でも絶対に持っていく。突然の雨が降ったらチャンスだ。下校しようとする井上さんに「入っていく?」と声をかける。これで相合傘ができる。仲良くなれる。
その日から僕は毎日折りたたみ傘を学校に持っていった。どんなに晴れてる日でも、どんなに天気予報で1日中晴れといわれてる日でも、僕は通学バッグの中に折りたたみ傘を忍ばせていた。そして作戦を決行してから42日目。ようやくそのときはきた。
朝は雨が降っていなかったにも関わらず、午後から急に降りだしたのだ。もちろん井上さんは傘を持ってきていない。帰りのホームルームが終わり、下校しようとする井上さんを追いかけた。
よしっ!今だ!
靴箱の前で井上さんに声をかけようとした。すると井上さんは、当たり前の顔して置いてある傘をパクって帰っていった。
あれが僕にとって初めての失恋だった。
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