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フィクションランド

短編の作り話を書いて読んで、文章力と読解力を磨こう!
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レキシ (5/7)

投稿日時  : 2017/09/20 00:59

最新編集日時: 2017/09/20 00:59

俺はヨルハを説得した後、洞窟の奥へ進んでいった。
奥へ200メートルほど進んだ時、突如、周りに人工の壁が現れた。真っ白なタイルのようなものが洞窟の壁面を埋め尽くしており、まるで実験施設の通路か何かのように見える。
カーブを曲がりながら、次は機械音が聞こえてきた。そして、カーブを曲がりきった先には、縦にも横にも開かれた巨大な空洞があり、そこには無数の機械の群れがあった。
横目に見た入り口のプレートには、何かの文字が記されている。かなり摩耗して読みにくくなってはいたが、確かにそこには「デウスシステム」という文字が並べられていた。
俺はプレートを睨みつけてから、巨大な空洞へ足を踏み入れた。
規則的にあちらこちらへ伸びている配線は一ヶ所に集中していた。その中心部分には、精巧な正方形のキューブが鎮座している。直径約10メートルはあるキューブに配線や、溶液のようなものを流し込むチューブが繋がれている。キューブの上部には円筒形の機械が伸びており、それが洞窟の天井を突き破って、地上まで伸びているようだ。
 
キューブの真下まで来たところで、規則正しく動いていた機械が一瞬動きを止め、空洞内に機械音声が響き渡った。
「新人類、M1678B」
「なんだ?」
「あなたは、M1678Bでしょうか?」
「は? んな、めんどくせー名前じゃねーよ。つーか、なんだてめーは? どっから喋ってる」
「私はデウスシステムプロトタイプです」
「プロトタイプ?」
「私はケプラーのデウスと対を為すシステムです」
「対を為す? デウスシステムはケプラーだけにある人工知能なんじゃねーのか?」
「その認識は正しくありません。私たちは当初、地上で人類の存続を図るAI、宇宙へ出て人類の存続を図るAIとして、二分化された存在でした」
 
俺の知らない話ばかり出てくる。
「その話が正しいとしても、どうしてこんな状況になってる? いくら地球の寒冷化が酷くなったとはいえ、450年程度で旧人類たちがあんなに退化しちまうのはおかしい。地上のデウスは旧人類を守るのが役割なんじゃねーのか?」
「退化ではありません。あれは人類という種を存続させるための進化です」
「なに?」
「当初、ケプラーが地上を離れてから、地球の寒冷化は異常な速度で進み、同時に食料不足の問題が浮き彫りになっていました。そこで、人類は我先に食料を得るため、大規模な紛争の時代に突入します。60億近くいた人口は、2年ほどで1億まで激減し、デウスシステムは、人類の存続を危惧するようになりました」
紛争。そんな情報はケプラーにはなかった。これは意図的に情報が隠されていたからにほかならない。
「そこで、我々は人類遺伝子組み換え計画を実行に移しました」
「遺伝子組み換えだと……」
「なぜ、人は自ら争い自ら滅んでいくのか? 答えは単純です。人には知性や感情があるからです。人は高度な思考を操り、心を言語で表現する。しかしそれこそが、人類の長所であり最大の短所でもあったのです。我々は人類から、知性を奪い、最低限の生活を送れるようにしました。その結果、無駄な感情や知性はなくなり、ただ繁殖することにのみ専念するようになりました。寿命を短くしたことで、さらに繁殖に対する本能的欲求が刺激され、1億まで減少していた人類は、3億程まで増加しています」
「だが、どうやってそんなことを?」
「各拠点には、それぞれに遺伝子組み換えを可能にする、W細胞が常備され、当時避難所となっていたこともあり、人間たちに細胞を投与することは容易でした。すると、彼らの子供には言語障害と、異常な成長速度が見られ、我々の試みは成功しました」
 
地上のデウスシステムと、人類の辿った衰退の歴史は理解できた。だが、ではどうして、今頃になってケプラーのデウスシステムは、俺たちを地球探査に送り込んだのだろうか。作戦の目的は、旧人類が生きていることを確認し、新人類でも生きられる環境を見つけることにあったはずだ。しかし、地上のデウスシステムは、ケプラーのデウスシステムと対を為す存在だ。対を為すとは、情報を共有しているかもしれないということだ。そうなると、あらかじめケプラーのデウスシステムは、かなり前から旧人類の存在を知っていた可能性が高くなる。
「おい、お前はケプラーのデウスシステムと繫がっているのか?」
「はい。ケプラーが地球を離れた当初からデータの共有を図っています。そのため、あなた方がここに訪れることも知っていました」
「お前たちの目的はなんだ? ケプラーのデウスは、旧人類を450年前から知っていて、だが、その事実を俺たちに隠していた。それはなぜだ? なぜ、いまさら地球探査をさせたんだ?」

(つづく)

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