お守りが届いた。
届いたお守りには手紙が添えられてあった。
――このお守りをご購入いただき、ありがとうございます
あなた様にも不思議な体験と良縁がございますように
普通に考えれば、かなりカルトな感じだ。
でも受け取った時、私は意外と冷静だった。
確かに桐箱に入っていて、仰々しい感じがした。
お守り自体は元々真っ白なものだったと思われるが、中古品らしく
四隅が少し黒ずんでいた。
それにしても、あの時、桐箱を開けた瞬間、
冷気のようなヒョォォとした感覚を受けたことが今でも忘れられない。
あれは何だったのだろうか。
お守りを手にした私は、早速カバンの中のポーチに結んだ。
中古だし、あまり綺麗な感じもしなかったので、
私には馴染みのある、使い古したポーチに結ぶことを選んだのだ。
オークションで手に入れてから1週間経った時くらいだろうか
私は夢を見た。
それは夢の中で寝ている私の左胸が光る夢だった。
青白く光った胸がまぶしすぎて、私が目を覚ましてしまう夢だった。
なんだかややこしい夢だった。
でも、その夢をみた翌日から私の生活が変わっていってしまった。
職場で上司から
――これ、お願いした業務まだやってくれていないの?
とか
――何度も言わせないでくれる?
とか言われることが増えたのだ。
私が「えっ?初めて言われましたけど」とか言っても不思議そうな・・・怪訝そうな顔をされるだけだった。
私は、「はあ!?」って感じで対応していくしかなかった。
上司がボケたんじゃないかと思いながら、それでも首尾よくやってきたつもりだった。
でも我慢できず、苛々していたのが言動に出てしまっていたかもしれない。
結局、上司との溝ができて、それが埋まらないまま
最終的に「この仕事向いていないのかもね」と言われ・・・。
私は言われるがまま退職願いを出した。
それから私は会社と自宅を往復する毎日ではなくなった。
それは自宅にいるだけの毎日になったということ・・・。
もちろん就職活動もしているが、なかなか決まらず
失業手当や貯金の切り崩しも限界になってきた。
実家に帰る手段も考えたけど、親にも言いづらいし
前職の退職を引きずってか、ストレスで過食気味になり
別人のように太ってしまったので、誰にも会いたくない。
考えてみれば、あのお守りを手にしてから私の人生が狂いだしたのかもしれない。
そう思った時、私は買った時の出品者の言葉を思い出した。
――お守りによって謙虚になって仕事も交友関係もうまくいった
そっか!お守りの前の所有者は同じような体験をしたのだ。
でも、その人はその時謙虚になることで事態を好転させたのだ。
私は・・・事態に陥った時、傲慢になった。
少なくとも苛々を態度に出していた。
そういうことか・・・
あのお守りは所有者を試すんだ。
なんて怖いお守りなんだろう・・・
そう思った私は、すぐにあのお守りをオークションに出品し直した。
今ではもう別の人に落札されて、私の手元には無い。
落札者からお守りを受け取った通知を確認した後、
私は消えるように自宅を去った。
行先は決めていない。
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