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満員電車も悪くないかも(前編)

投稿日時  : 2017/08/02 22:13

最新編集日時: 2017/09/20 01:56

28歳で転職してもうすぐ半年。
ようやく新しい出勤時間や通勤電車にも慣れたが、それでも満員電車は嫌なもの。

もともと僕は転職前から30分間の満員電車に乗って通勤する毎日だった。
転職後は出勤時間も勤務先の駅も替わり、
電車に乗る時間は15分間で済むようになったものの、
満員電車には変わりなかった。

しかし、いつも同じ時間の同じ電車、同じ扉から半年間乗っていると
満員とはいえさすがに乗車する人々も馴染みの顔になってきた。

乗ってすぐ目の前には白髪混じりの中年男性。
すぐ近くのつり革にはイヤホンをしなからスマホゲームに没頭する若い男の子。
まぁ向こうもいつもの駅からいつもの28歳くらいの男が乗ってくることは分かっているだろう。

ちなみに僕の見た目を説明するなら、少し痩せ型、細い垂れ目。
自分で言うのもなんだが今流行りの塩系イケメンに入るのではないかと思う。
ただ、どちらかと言うと雰囲気勝負なところもあって、第一印象だけではモテず…。
前職では意外と社内で人気があったようだが、今に至るまで3年間カノジョ無しの生活だ。

さて、話を戻すと、そのいつもの満員電車の扉の1番手前の手すり部分にはいつも若い女性が立って乗っている。
イヤホンで音楽を聴いているようだが、特にスマホをいじるわけでもなく外を見てばかりいる印象だ。

僕が乗車する時はすでに満員なので、僕は結構その女性のそばに立つことが多く、密着してしまうことも多い。
なんか申し訳ないけど、僕にはどうすることもできず、
せめて電車が揺れた時には彼女に寄りかからないよう、僕なりに精一杯努力しているつもりだ。

そんなある日、電車が人身事故で大幅に遅延したことがある。
その時僕はいつも通りの時間に駅に着いたものの、13分遅れで来た電車に乗ることになった。
もちろん、この電車がそもそも何分発の電車だったのかもわからない。とにかく13分遅れて到着したらしい。

すでにギュウギュウに混んでいた電車に乗ると、もう格闘技かというくらいの押され具合。
まっすぐ立つこともできず、微妙に片足だけに重心が集中し、くの字な感じで立つしかなかった状態だった。

そんな中、ふと右脇に目を落とすとそこには毎日扉の手すり部分に立っている女性もいるではないか。
ついつい僕は「あ」と声を出してしまった。
すると女性も僕に気付いたようで、こちらを見て目が合った時に「はっ」という顔をされた。

もちろん名前も住んでいるところも年齢も性格も知らず、話したことすらない。
唯一顔と勤務態度の真面目さくらいしか分からない人だが、
いつもとは違うタイミングで会うと妙な親近感を覚えるものだ。
向こうも僕を覚えてくれてたみたいだったので、それも含め特別嬉しく思えた。

僕は会社に向かう駅で降りた。
あの女性はまだ電車に乗っていった。
今まで当たり前の時間に当たり前の人がいただけなのに、
それがイレギュラーの時間にイレギュラーな場所で会っただけで、やけにドキドキしたのを覚えてる。

彼女はどの駅からどの駅まで乗っているのだろうか。
彼女は何歳なのだろうか。
彼女には彼氏がいるのだろうか。
彼女の名前は何だろうか。

そんなモヤモヤが心に芽生えてから、毎日の通勤電車が楽しくなった。
楽しくなったというよりは、恋するドキドキ感を毎朝持つようになったと言うべきだろう。
理由はもちろん彼女に会えるからだ。

相変わらず彼女はイヤホンを耳にしながら外を見ているだけだが、僕は15分間、
本人に気付かれないように彼女を見るのが何よりの楽しみになってしまった。

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