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フィクションランド

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満員電車も悪くないかも(後編)

投稿日時  : 2017/08/02 22:21

最新編集日時: 2017/09/20 01:57

これはつい1ヶ月前の話だ。

僕は会社の忘年会ですっかり遅くなってしまった。
会社の人たちは早く帰宅したがる人が多く、
忘年会シーズンより少し早い時期に催したものの、結局長々と呑んでしまい、
帰宅するには最終電車でギリ間に合うかどうかの時間になった。

僕は最後の1本締めもそこそこにダッシュで駅に向かい、
何とか終電に間に合った。

電車に乗るとかなりガラガラで、
座席の端っこに座る人がいる程度だった。

僕も座席の端っこに座り、大きくため息をついた後、ふと顔を見上げた。

するとびっくり。
正面にまさかの彼女が座っていたのだ。

先に向こうが僕に気付いていたようで、僕と目が合うと軽く会釈をしてくれた。
僕は自分の顔が真っ赤になっていると分かったが、
もともと酔っているせいで顔が赤いはずなので、そこはバレなかったと思う。
むしろお酒のせいで陽気だったぶん、笑顔で会釈を返せた。

「遅いですね」
僕は自分でもびっくりするくらいナチュラルに話しかけた。
多分これもお酒の力だろう。

すると彼女は「はい。本当はこんなはずじゃなかったんですけどね…」と。
いきなり意味深な返事がきた。

「え?どうしたんですか?」
と僕。

「私、明日会社お休みだから朝まで遊ぶ予定だったんですけど、
お友達の都合でずいぶん早い時間に解散になってしまって…」
という彼女。

その後の僕らの会話は僕は覚えていない。
覚えていない理由が酔っ払ってしまったせいなのか
彼女への恋心による緊張のせいなのか…
今となってはどうでも良い話だ。

唯一覚えているのは
「次で降りませんか?」
と僕が誘ったことくらいだ。

そして今、その時の彼女は相変わらず毎朝僕と同じ満員電車に乗っている。

名前は由美子。
性格はおっとりしているが意外と頑固。
年齢は僕のひとつ上。

毎朝、お互い降りる駅こそ違うのだが、乗る駅は同じになった。

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