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フィクションランド

短編の作り話を書いて読んで、文章力と読解力を磨こう!
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いいね!友達(後編)

投稿日時  : 2017/10/10 12:24

最新編集日時: 2017/10/10 12:24

次の日の昼頃。
仕事中の僕の携帯が鳴った。知らない番号だったが、それは僕の地元の市外局番だった。
実家が電話番号でも替えたのかと思い、僕は何気なしに「もしもし」と電話を取った。

しかし、それは森下の母親からだった。
森下の携帯番号を見て、仲が良かったと思われる友人にこうして電話をしているとのこと。

電話の内容は、森下の死だった。

森下は東京で1人暮らしだったようだが、昨日の早朝、入浴中に突然
誰かにナタのようなもので襲われ、いきなり腕を切られたらしい。
気を失いながら浴槽に倒れて、出血多量でそのまま亡くなったとのこと。
切り落とされた腕はまだ見つかっていないらしく、
警察は強盗致死傷罪で捜査しているようだが、
母親が言うには、森下が特に誰かに恨まれているとか
様子がおかしかったとかは無かったそうだ。

昨日の早朝、いわゆる朝シャン中を狙われたのだと思われるが
それから48時間も経たずして、母親が僕に電話をしてくるということは…
母親なりの犯人探しをしているのかもしれない。

僕は森下の母親に、最近の森下との関係性について、正直に話した。
ここ1年はFacebookでしかお互いの状況を分かっていなかったこと。
森下がどこに住んでいるかすらも分かっていなかったこと等、真摯に伝えた。
母親は電話越しに泣きながら僕の話を聞いてくれた。

 

そして、その日の夜。
就寝前のいつものFacebookの時間だが、僕も森下の件がショックでなかなか寝付けない。
寝付けないのだが、だからと言ってFacebookを見る気にもなれなかった。

しかし、なんとなく目を瞑りながら僕は気になり始めた。

 ・一昨日から始まった吉田の意味不明な生々しい写真。
 ・一昨日からいいね!されていない森下のFacebook。
 ・昨日の早朝に殺された森下。

僕と森下を繋ぐのはFacebookだ。そして、そこには共通の友人である吉田がいる。
部屋の電気は暗いまま、僕は慌てて携帯を開きFacebookを見た。

あの生々しい肉は、ひょっとして森下の…
いや、それはおかしい。
だって、吉田の変な投稿写真は一昨日から始まったわけで…
少なくとも一昨日の夜中、僕が見た時には、その写真は投稿されていた。
その時には森下はまだ生きているはず。次の日の朝に殺されたわけだから。

 

まさかな…と思いながらFacebookを開くと吉田の新しい投稿があった。
しかし今回は今までと違っていた。
それはライブ動画だった。

そしてついに、ここ2日間見せられていた生々しい肉の写真が何か分かった。
それは人間の腕の切断面だった。

僕は怖くなったが、まるで金縛りにでもあったかのように
その動画から目が離せないまま、ただただ固唾を呑んだ。

それからしばらくして、動画の定点カメラに向かって吉田が現れた。
久しぶりに見る吉田は、やつれていて恐ろしい姿だった。
髪の毛も抜けていて、ところどころ地肌が見えるほど。
目の下はクマが出来ていて、家の中は薄暗い。

吉田は右手に切断された腕を持っていたが、左手には…
左手には…切断された足?
そう、左手には切断された足を持っていた。

誰の足だ!?
森下のか!?いや違う。森下は腕だけ切られたはずだ。
でも、もし吉田が右手に持っている腕が森下のだとしたら…
殺害前の予告投稿なんてことになってしまう。それはおかしい。

僕は混乱を極めた。
混乱して混乱して…それでも動画を観ていたら、吉田が口を開いた。

 

 「…これはいいね!してくれてたやつの右腕…
  そして、これはそれをいいね!してくれたやつの右足…
  
  これから行くね。」

 

 


 

皆様も、どうか友達選びとそのいいね!には充分気をつけてもらいたい。

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