気楽に作り話で暇つぶし

フィクションランド

短編の作り話を書いて読んで、文章力と読解力を磨こう!
フィクションランドは暇つぶし感覚で心を豊かにします。

留守番電話

著者:蚊取犬

投稿日時  : 2017/11/20 23:51

最新編集日時: 2017/11/20 23:57

二十数年前、一人暮らしをしていた頃の話、その当時は携帯電話はまだ一般的ではなく、電話といえば、固定電話が一般的でした。

一人暮らしの我が家も小さなカセットテープを内蔵した留守番電話を使っていました。
誰もいないときに電話がかかってくるとあらかじめセットされたメッセージが応答し、その後、電子音の後に録音を開始するというごく普通の留守番電話でした。ただ、1件あたりの録音されるメッセージに時間の制限はなく、テープが切れるまで最大で約15分程録音が出来ました。
当時の私は電話をかけてくると知り合いもあまりおらず、家に帰って留守番電話のランプが点灯していても、せいぜい1〜2件電話があっただけで、そして、大抵の場合はメッセージが録音されることはなく、通話終了後の「プー、プー、プー」という音が録音されているだけでした。

ある晩、いつも通り、誰もいない部屋に帰ると、留守番電話のランプが点滅していました。留守の間に誰かが電話をかけてきたのでしょう。

電話のボタンを押すと、「メッセージが20件あります。」と電話が喋り、再生が開始されました。
留守中にそんなに電話がかかってくることはなかったので、何か特別な急用があったのではないか(例えば、身内の不幸とか)と、少し不安になりました。

しかし、メッセージを聞いても、録音されていたものは通話終了後の「プー、プー、プー」という音のみ。特に緊急の連絡が入っているわけでもありませんでした。ただ、1分おきぐらいで電話をかけてきていたようでした。

そして、最後の1件になったとき、それまで全く録音されていなかった留守番電話に突然女性の声が録音されていたのです。

問題は、その女性が喋っている言語が、全くもって聞いたことのない言語(英語でも中国語でもドイツ語でもない、当時の私は意味は分からなくても幾つかの言語であれば、何語かは判断できるだけの知識はありました)だったこと、そして、録音されたメッセージが、延々と続いていたことでした。

ボソボソと小さな女性の声で延々と意味不明なメッセージが再生される。気味が悪くなった私は、途中で再生を中断しメッセージを消去しようとしました。
が…

ふと気付いたのです。ボソボソと聞き取れないような大きさの声の中に、何度も私の名前が出てくるのです。
明らかにこの電話の主は、私に電話をかけてきていて、メッセージを残している。間違い電話ではないようなのです。
謎のメッセージは5分、10分経っても続いた後、テープが尽きたのか、唐突に切れました。

その翌日にも、またその翌日にも十数件の留守電があり、その最後に正体不明のメッセージがテープが尽きるまで録音されていることが続きました。まるで、留守の時間を狙って電話をかけてきているように。
いい加減、気味が悪くなり、次の日、留守番電話をセットしないで出掛けました。これで正体不明のメッセージが録音されることはないだろうと思っていたのですが…。

家に帰ると、なぜか留守番電話のランプが点滅していました。そして、前日と同じように十数件の着信の後に謎のメッセージが謎の言語で、しかも何度も、私の名前を呼ぶ声が録音されていたのです。

その翌日はついに、電話線を抜いて出掛けましたが、それでも家に帰ると同様な留守電が録音されていました。
この電話の主は自分が留守なのを知っていて、自宅に侵入し、他のものには一切手を出さず留守番電話をセットし、その後十数件の着信と謎のメッセージを残している。
えも云われぬ恐怖に襲われ、しばらく、友人の家に転がり込み、家に帰るのをやめました。

そして数日後、久々に自宅に帰ると…。

部屋の中は特に変わった様子はなかったのですが、一つだけ異変が…。

テーブルの上の電話機がハンマーで叩き潰されたかの様に粉々に破壊されていたのです。

すぐに警察を呼び、その後数日間、実家へ帰って過ごし、その間に引越しをしました。荷物をとりに自宅に戻った際には、部屋に特に異変はありませんでした。

その後、警察からも特に連絡はなく、事はうやむやになってしまいましが、今でもふと思い出すのです。電話の主は誰だったのか、謎のメッセージは何を伝えたかったのか…。

そして、今でも家に帰って、留守番電話のランプが点滅していると、当時を思い出し、恐怖にかられるのです。

  • うん!うん! (14)
  • うん (6)
  • うーん (1)
  • うううん (0)

コメントを書く

この話を読んだ人が読んだ話

同ジャンル内の関連話