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フィクションランド

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隣の住人

著者:ガンさん

投稿日時  : 2017/08/04 10:15

最新編集日時: 2017/09/07 10:57

僕は3階建てのマンションに住んでいる。
一応オートロック付きのマンション。そこそこ古くて、壁の色は全然オシャレじゃない薄緑色。駅からは徒歩15分と便利なんだか、便利じゃないんだかわからないような立地。そこに5年ぐらい住んでいる。

部屋の番号は309。4とか9とか不吉な数字が部屋番に使われているのが珍しいという人もいるが、僕はここにずっと住んでいる。

僕の住んでいるマンションは、人の入れ替わりがそんなに激しくもなく、エントランスとかで見知った顔に出会えば、軽く挨拶をするぐらいの関係性は築けている。

でも、僕の家の隣、310の住人には今まで会ったことはない。夜中に壁の向こうから物音が聞こえてくるので、確かに人が住んでいるのがわかる。廊下にある電気メーターが回っているのも確認した。だから、確実にそこに人は住んでいる。

このマンションにはエレベーターがない。だから、階段を登って3階まで行かなければならない。階段はマンションの一番奥にあり、その階段の目の前に310の部屋がある。

ある日、僕がマンションに帰り階段を登っていると、2階にある210の部屋に、若い大学生が引っ越してきたのがわかった。友達と仲良く引っ越しの荷物を運んでいるのを見たからだ。とても楽しそうで、これからの生活に希望を持っているように見えた。マンションの管理人さんも一緒になって会話をしているのがわかった。僕は軽く挨拶だけして、階段の前を通り過ぎた。

それから一ヶ月後。僕が階段を登り210の前を通り過ぎると、そこは空き家になっていた。あんなに楽しそうだった大学生は一体どこへ行ってしまったのだろうか。たった一ヶ月で大学を辞めて、出て行ってしまったということも十分に考えられる。世の中には新しい環境に適応することができない人間もたくさんいる。でも、僕はなんとなく気味の悪さを覚えていた。

しばらくして、マンションの管理人さんにたまたま出会ったので、210の住人のことを少しだけ聞いて見た。すると管理人さんは顔を曇らせてこう行った。
「あの大学生はさ。お風呂場から雨漏りがするって言って、出て行ったんだよね。特にお風呂場から、少し黒みがかった雨漏りがするって言ってさ」
管理人さんはこう続けた。
「さすがに、雨漏りは事故物件になるから、ちゃんと直さなきゃいけないんだけど、天井は特に問題ないみたいで、直しようがないんだって、困ったね」
僕は管理人さんに訊いた。
「310の住人には何か話をしたんですか?雨漏りの原因は上の住人じゃないんですか?」

すると、管理人さんはこう答えた。
「310は、あなたが入って来る前から、ずっと空き部屋だよ」と
僕は愕然とした。住んでいると思っていた住人が住んでいなかったことに驚いた。

後から同じマンションにする住人から聴いた話だが、昔310には女性が一人住んでいたが、お風呂場で手首を切って自殺をしたらしい。それ以降、その部屋には誰も住んでいないということだ。

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