「わぁ、綺麗だね~」
並木通りにあるクリスマスイルミネーション。
ここを通り過ぎるカップルがそう言いながら私とすれ違っていきます。
この時期になると、クリスマスイルミネーションがあちらこちらで綺麗に飾られるのでしょう。
私のいるこの街でも、綺麗に着飾られた木々達が眩しそうにしています。
イルミネーションは周りの人々の気持ちを豊かにしてくれるほど綺麗な反面、取り付けられた木々達は迷惑そうにしている気もします。
そして、通り過ぎる様々な人々に注目され、迷惑ながらも照れくさそうな、そんな複雑な表情を浮かべているように見えます。
私は当時の彼と20年以上付き合い、ついに昨年別れました。
別れるというよりも、別れさせられたと言ったほうが正確かもしれません。
20年以上お付き合いをし、これからも未来永劫二人の仲は続くものだと思っていました。
でも、別れは突然やってきたのです。
別れるまでは、とても仲の良かった私たち。
そんな私たちの間では、毎年クリスマスの時期になると一緒にイルミネーションを眺めることが恒例になっていました。
彼と私はいつもそっと手を乗せ合い、一緒に春と夏を越え、過ごしやすい秋になるとお互い身を寄せ合い、そして冬には抱きしめ合うように過ごしてきました。
何をするにも二人は一緒で、読んで字のごとく片時も離れたことはありませんでした。
そう。あれは、昨年の冬のことでした。
いつもの路上でいつものように私たちが寄り添っていると、スーツ姿の男性たちがやってきたのです。
「散々使ってきたこの商店街もすっかり寂れてしまった。来年にはここに大きなショッピングモールが建築されるんだ。だから君らはもう一緒に過ごせないんだ。」
そう言われました。
私には何のことかさっぱりわかりません。その男性が誰で、私たちに何が言いたいのか、まるで意味が分かりませんでした。
私たちに向けて言っているのかさえ私には分かりませんでした。
でも、きょとんとしていた私の横で、彼が小刻みに震えているのが分かりました。
彼と私は20年以上お付き合いをしているので、私は彼のことなら何でも分かります。
だからそれは寒いからではなく、恐怖から来る震えであることもすぐに理解できました。
今思えば、私はまだ若いため、そのスーツ姿の男性が言っていることがすぐに理解できなかったのだと思います。
しかし、私より前からこの街に住んでいる彼には、何のことを指しているのかすぐに分かったようです。
ただ、あれから彼は私と話すことなく、ただただ強く手を握りしめ続けてくれていました。
そして、それから一週間ほどした明け方。
ついに彼は、黄色い帽子に灰色の服を来た中年男性たちによって、どこかに連れ去られてしまいました。
次の日、私も複数の男性たちによって連れ去られました。
連れ去られた私がやってきたのが、この並木通り。
今は一人。
私は一人でこうしてクリスマスイルミネーションを見ています。
私は木。
成長に合わせて人間の手で刈られ、他の地へ植えられ、されるがままにそこに立ち続けています。
私の大きさが似合う土地に移動させられます。
そんな私の唯一の楽しみはクリスマスイルミネーション。
毎年、眩しそうにしている皆の顔を見ながら
今でも遠く離れた彼を想い、過ごしています。
コメントを書く