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フィクションランド

短編の作り話を書いて読んで、文章力と読解力を磨こう!
フィクションランドは暇つぶし感覚で心を豊かにします。

偶然見つけたダーツバー

著者:ゆめか*

投稿日時  : 2017/09/23 09:22

最新編集日時: 2017/09/23 09:24

今日は日曜日-

仕事は休みだが、特に何の用事もない自分は、
渋谷のセンター街を当てもなくふらふらと歩いていた。

横目で見かけた宝くじ売り場でなんとなく1枚200円のスクラッチを買ってみるも当たるはずはなく。
今週もピンと冴えない休日を過ごしていた。

彼女もおらず、友達も少なく、無趣味な僕は、家の中にいても気晴らしはできず、
休日は外に出かけることが多かった。
公園で1人のんびりと時間を潰すことも多く、喫茶店に入りお茶することもあったが、
それもたまにのことであった。

渋谷の人混みに紛れながら歩いていると、黒い大きな看板がふと目に入った。

「ダーツバー・・・」

ダーツなんて今までしたことが無かったが、暇だった僕は吸い込まれるように
バーに続く階段を登っていった。

バーの中は意外と広く、大きなカウンターの奥にダーツ代が6台並んでいた。
先客がいて1人男性がダーツを投げていた。

僕は昼間だが喉が渇いていたのでビールを頼み、ダーツ台の前のテーブルに座った。

100円で1ゲームかできるようで、「301」という数字を減らしていき0点丁度を狙うゲームに
挑戦することにした。

最初は、隣の男性の見よう見まねで投げていたが、
BULLを狙うだけでない奥深さが面白く、いつのまにか夢中になっていた。

次の週も暇だった僕は、同じくらいの時刻にダーツバーに赴くと先週と同じ男性がいた。
僕に気付くと、「先週もお会いしましたね。」と軽く会釈をしてくれた。

301で勝負をしないかと誘われ、共にダーツをした後、一緒に夕飯を食べた。
彼は既に結婚しているようで、単身赴任で東京に来ており、休みの気晴らしにダーツバーに通うようになったとのことだった。

雰囲気が似ていた僕たちはすぐに意気投合し、バーで会うと一緒に週末の時間を楽しむようになった。

僕はその後も毎週のようにダーツバーに通った。
数ヶ月後のある週も僕はダーツバーを訪れたが、今日は友人の彼はいなかった。

アイスコーヒーを注文しテーブルに着くと、女性が1人入ってきた。
きょろきょろと見回し、飲み物を頼むと僕から少し離れたダーツ台の前に座った。

挙動から彼女はダーツの経験があまりなさそうに思えた。
僕は気にしないようにダーツを投げていると、急に声をかけられた。

「あの、ダーツってどうやってプレイするんですか・・・?」

僕は彼女が見知らぬ自分に声をかけてきた勇気に驚き、数秒間沈黙したが、
ダーツ歴数ヶ月の初心者であることを伝えた上で、自分なりの投げるコツや、
本やネットで調べた知識を教えると、首を振り、関心しながら喜んでくれた。

彼女にダーツバーに訪れた理由を尋ねると、また僕と同じように週末を持て余していた1人だった。
その日は、その場での関係として別れたが、次の週も彼女はダーツバーを訪れた。

僕の友人も来ていたため、友人に彼女を紹介すると、次からは3人でダーツを楽しむことも、
時に、一緒にお酒を嗜むことも増えていった。

僕は会う度に彼女の素直さに惹かれていき、人生初めての告白をしてOKを貰った。

偶然見つけて立ち寄ったダーツバーが、僕の人生を変えた。

夢中になれる大好きな趣味に、友人と、素敵な彼女もできた。

あの時、偶然見つけたダーツバーに1歩足を踏み入れたからだ。
今までの自分には考えもつかないことの連続で、可笑しくて笑ってしまうこともあった。

しかしその間も幸せで胸は高鳴り続けていた。

ダーツの矢を見つめて思う。

”この一本の矢は僕にとってのキューピッドだ-”

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