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フィクションランド

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小さな幸せを見つける日常

投稿日時  : 2017/10/18 01:29

最新編集日時: 2017/10/18 01:29

とある雨の日。

駅のホームに下る階段で足を滑らせ、正座状態のまま数段転げ落ちた。膝と脛に痣ができた。

それから道を歩いていると、マンホールの穴にヒールがハマってしまい、抜け出そうと傘を使って踏ん張ったら、傘骨が曲がってしまった。

ーまだ雨は続く。

 

歩道の無い道で横を通り過ぎた車が水溜りを撥ね、私のスカートにかかりまくった。私の白いスカートは灰色でびちゃびちゃになった。

混雑した道。通り過ぎる人の傘のつゆ先が何度か耳に当たり、私は不快感を募らせた。

ーそしていつのまにか雨は止んだ。

 

私は傘骨の曲がったビニール傘を捨て、灰色に汚れたスカートを膝上までたくし上げ、ちょっと小走りしてみた。
何もないただの道路を、急ぐことなく小走りしてみた。

今日は色々あっても、明るく前を向ける。
それだけ私の気持ちは晴れやかだったのだ。
そんな気分上々には理由があった。

 

以前、表参道のお店で出会ったニット帽に一目惚れした。でも、その時はなぜかそのニット帽を買わなかった。
それから私はずっと買わなかったことを後悔していた。

でも1週間前、偶然インターネット通販サイトで同じニット帽を見つけた。私は迷うことなくすぐにそれを購入した。
そのニット帽がいよいよ今夜、私の家に届く。

 

こんな楽しみを話しても、きっと他人には些細過ぎることだと笑われるだろう。

でも私にとっては、日常をワクワクさせるには充分すぎるほどの出来事なのだ。
少なくとも私の日常では、この小さなお買い物がとても大きな期待となって、1日の気分を変えてくれる。

 

そして、ついに夜を迎えた。
時間指定した配達時間をちょっとだけ過ぎて帰宅すると、郵便受けには何やら紙切れが。ダイヤルロックを解除して紙切れを取り出すと、それは宅配業者からの不在票だった。

どうやらタッチの差で宅配業者と行き違ってしまったようだった。今日はもう再配達をしてくれる時間ではない。残念だけど、私のニット帽はまた24時間お預けになってしまった。

悲しかった。
それと同時に、今日1日を振り返ってみたら私の目に涙が溜まった。なぜだか絶望的に悲しい涙だった。

 

こんな日常を過ごす私にとって、楽しみの延長戦は、喜びの消耗戦でもある。

今夜逃した小さな幸せは、明日同じ大きさになっているとは限らない。

 

もう寝よう。
明日は明日で良いことがきっとある。

 

こんな私の日常。

毎日、小さな・・・とっても小さなワクワクを探しながら生きる私の日常。

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